ファミリービジネス学会学会賞ならびに記念セミナーについて

去る9月16日に開催されましたファミリービジネス学会第16回全国大会におきまして、以下の著書がファミリービジネス学会学会賞を受賞されました。

 上野善久(2023).『成熟産業の連続M&A戦略：ロールアップ型産業再編の手引き』中央経済グループパブリッシング 

本書は、多数の中小零細事業者が同質競争する市場において有効とされるロールアップ型の産業再編を企画・実行した経過と結果をもとに、幅広い産業分野に適用できるように、ノウハウのエッセンスを凝縮して抽象化・普遍化を施したものです。背景には、企業数と従業者数で大半を占める日本の中小企業とそれらの属する成熟産業が、経済合理的な革新を遂げてほしいとの想いがあります。M&A関連の既刊書には、大企業のミドル向けに制度や技法を解説したものが多い反面、ファミリー企業の経営者が自社の理念や長期目標を実現するための手引書が少ないことも執筆の動機でした。

前半では、自社の理念を経営の根幹に据え直すことを訴え、その理念を実現するために、どの産業のどのステージを狙うのかというポジショニングの話と、各種経営資源の編成方法の話を統合して、１つのロールアップ戦略として体系化する方法を詳述しました。
第1章では、産業構造の進化と衰退の観点から、連続M&Aが有効になる業種の特性を明らかにしました。次いで、ファミリービジネスの特質を色濃く残す新興上場企業４社の失敗事例を用いて、連続M&Aの要諦を抽出しました。
第２章の計画段階では、相対シェアの概念を用いて、マクロの産業構造における自社の位置づけと成長の目標値を設定する枠組を示し、連続M&Aを推進する主要な人材と、理念を顧客価値に転換する機能を担う中核技術について要件を明らかにしました。 

後半では、実際に連続M&Aを遂行するうえでの実務上の手順を解説しています。
第3章では、実行段階における20項目のTo Do Listの内容を具体的に論じました。買収先の選定基準や勧誘ツールなどの準備作業を経て、実際にコンタクトしてから契約に持ち込み、さらには経営統合発足期日を迎えるまでの現場活動について、大局的なことから現場従業員個々人への対応に至るまで全般を詳述しました。
第４章では、ファミリー経営の中小企業を主たるターゲットとしたM&Aにおいて、M&A後も対象企業の経営者が続投し、あるいは後継者に継承する場合に有益な実務面の手法について紹介しています。
第5章では、ロールアップ型連続M&Aの限界について分析しました。ある産業構造に有効な戦略は、有効であるほどその実行によってほかならぬ当該産業の産業構造が変貌し、その結果として連続M&Aの果実が収穫逓減していくことを示したうえで、連続M&Aには打ち止めにすべき時期があることを解明し、経営資源の適正配分と従業員を含むステークホルダーの長期的なメリットを最大化する観点から、その時点を発見する指標と判別方法を提示しました。

全編を通じて、従業員、顧客、創業家を含む関係者の情緒的な側面にも配慮しつつ、長期目的の達成に向けて遂行すべき現場実務の具体的な内容を体系的に明らかにしました。

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また、学会賞受賞記念セミナーを以下の通り開催いたします。
みなさま、是非奮ってのご参加、よろしくお願い申し上げます。 

日時：11月30日（木） 18:00〜19:00

テーマ：「経営（者）と経営学（者）のあいだ　―　実務者による研究もどきの意味はどこに」

講師：株式会社布屋本店代表取締役　上野善久様

（講師プロフィール）
1985年東京大学経済学部経営学科卒業、英国国立大学院経営学修士課程修了（MBA）。
三菱総合研究所、ボストンコンサルティンググループ、布屋本店を経て、日本ジェノス創業。代表取締役として18件の連続M&A（譲受17件、譲渡1件）により業界再編を主導。
Entrepreneur of The Year 2001 セミファイナリスト選出、東京工科大学大学院MBA課程講師、早稲田大学ビジネススクール招聘講師など歴任。ファミリービジネス学会、組織学会各会員。

なお、開催形式は対面ならびにオンライン（Zoom）によるハイブリッド形式での開催となります。

対面でのご参加の方は
【日本大学　通信教育部1号館71講堂】

オンラインでのご参加の方は、こちら より登録をお願いいたします。折り返し、ご登録のメールアドレス宛てにZoomの招待アドレスを送付させていただきます。